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1.建築・都市空間のデザインに関する記号学的研究


20世紀における近代化の過程で、建築・都市空間の均質化・意味喪失といった現象が浸透し、意味づけられた環境や美しい景観が次々に姿を消してきた。この問題の解決をめざして、意味に関わる現象の仕組みを扱う記号論(semiotics)の視点から、魅力的な建築・都市空間のデザインの可能性を探る。
(研究例)
・テクストとしての建築・都市空間の解読とデザイン
・建築・都市空間デザインのための設計言語・形態文法の研究
・街並みの景観の美的秩序とそのデザインに関する記号学的研究
・京都らしい都市景観のデザイン原理の解明とその創造的再生



<祇園新橋(京都市)>


<嵯峨鳥居本(京都市)>
図-1 街並み景観の連続立面図

街並みの現地調査で撮影したファサード写真をCGソフトによって繋いだ連続立面写真を作成し、それをもとにCADソフトを用いて作成した連続立面図である。CADで作成しているので、各要素の形状データとして座標を抽出することができる。


図-2 街並み景観における関係性のデザインの解読

街並み景観における関係性のデザインを解読するために構築した対話システムである。街並みの景観を様々な記号の集合であるテクストとして捉え、魅力的な景観の解読を行い、ミクロな建築が自己主張するのではなく、他者との関係や自然との関係に配慮することにより、マクロなレベルに街のアイデンティティ等の創発的な秩序が生成される仕組みを探求している(門内輝行「街並みの景観に関する記号学的研究」1997.1(日本建築学会賞(論文)を受賞),守山基樹・門内輝行「京都の街並み景観の記号化と記号のネットワークの記述−街並みの景観における関係性のデザインの分析 その1−」日本建築学会計画系論文集,Vol.75, No.652,2010.6)。


図-3 都市景観の3次元的可視特性(可視面の分布)

京都の都心部における街路空間(この図では交差点)から半径300m以内に分布する建物のどの面が見えているかをコンピュータによって分析し、赤色で自動的に表示したものである。同様の分析を高さごとに行い、都市景観の3次元的可視特性を明らかにする(太田匠哉『都市景観における3次元的可視特性の分析−京都の歴史的都心地区を対象として‐』京都大学修士論文,2008.2(2008年日本建築学会優秀修士論文賞を受賞))。







2.建築・都市設計の方法論に関する研究


技術合理性に根ざして問題解決を図るシステマティックな設計方法だけでは、現代の複雑で不確実な設計問題に対応できなくなっている。そこで、状況に応じて柔軟に設計を進める設計主体に焦点を結び、人間・自然と人工物の関係、人工物相互の関係のデザインを可能にする対話型の設計方法の研究を行う。
(研究例)
・人間−環境系のデザインの基本原理の定式化
・記号過程(記号の生成・退化・変形・結合等)としての設計プロセスの記述
・創発的プロセスにおけるメタファー(隠喩)、アブダクション(仮説推論)の役割
・コラボレーションによるデザインの方法・協調設計環境の開発
・建築における表現行為の解読(作品分析)



図-4 人間−環境系の多層性

「環境」の概念は多義的である。人間はまず何よりも@自然環境(Natural Environment)の中に生存しており、次いで集団で生きるほかはないことから、A社会−文化環境(Socio-cultural Environment)の中で暮らしている。そして、多種多様な物理的機能を実現し、社会−文化的意味を表現するために、B構築環境(Built Environment)を形成している。さらに最近では、情報ネットワークが張り巡らされ、C情報環境(Information Environment)がもう一つの環境として注目されるようになっている。このように、人間は同時に幾つものレベルの環境に重層的に包まれて生きているのである。現代社会では、これらの多層に及ぶ環境の関係をデザインすることが求められている。


図-5 デザインプロセスの構造

デザインの全体構造は、「生活−生産−設計の場の連鎖」とみなすことができる。すなわち、「生活」の場では、デザインされた対象(製品・建築など)は生活行為を通じて生活目標を実現する手段となり、「生産」の場では、デザイン(図面・模型など)が生産行為を通じてデザインされたものをつくり出す手段となり、「設計」の場では、デザイン方法がデザイン行為を通じてデザインを生成する手段となる。歴史的には「生活」→「生活−生産」→「生活−生産−設計」と分化が進み、つくる側と使う側の立場が分離してきたのである。図の包摂関係は、生産者は生活のプロセスを、設計者は生活・生産のプロセスを理解しておく必要があることを示している。知識社会では、ユーザーや環境からの応答をデザインにフィードバックする回路を回復する必要がある。コンバージョンによる建築空間の再生、ライフサイクルやメンテナンスを考慮したデザイン、グレードアップを前提とした製品シリーズのデザイン、幾世代にもわたって育まれ、漸進的に成長する都市景観デザインなどは、時間をかけて持続的に展開していくべきものである。そこでは、新しいものを創ると同時に、既存のものを育てていくことが重要な意味を持つことになる。


図-6 建築設計における創発的プロセスとしてのメタファー

メタファー(隠喩)とは、ある事柄(未知の事柄)を別の事柄(既知の事柄)で理解することである。例えばル・コルビュジェが、「住宅は住むための機械である」と宣言したとき、新たな“住宅”のデザインが “機械”のメタファーとして構想されたのである。ここで未知の事柄が属する領域をターゲットドメイン(DT)、既知の事柄が属する領域をベースドメイン(DB)と呼ぶと、メタファーはDBからDTへの写像として定式化できる。この写像は、様々なデザイン上の操作を経て実現される。







3.環境における人間の行動・認知に関する研究


人間は環境から形・色彩・音・テクスチャー・香り・動きなどの多様な情報を獲得し、自らの行動を通して環境への働きかけを行っている。環境に対する基本的ニーズであるアイデンティティ(固有性)とオリエンテーション(定位)に焦点を結び、行動・認知からみた人間−環境系のあり方を探求する。
(研究例)
・テリトリー・行動セッティング・眺望−隠れ場所理論等の環境行動研究
・環境の知覚・認知、イメージ・記憶、空間図式の研究
・環境における経路探索とそのシミュレーションに関する研究
・人間と環境との相互作用に関するアフォーダンス理論



図-7 自由描画法によるスケッチマップと現実の空間との歪み

キャンパス空間の主な構成要素について、地理情報システムを用いて、認知地図(自由描画法によるスケッチマップ)と現実の空間との歪みの大きさを計測したものである。


図-8 京都・鴨川における人間−環境系の記号過程







4.生活環境のデザインとその評価に関するシステム理論の研究


人間−環境系としての生活環境は、多種多様な要素の集合からなる総合システムであり、人間を要素として含むダイナミックなシステムである。この複雑なシステムを望ましい方向に導くために、生活環境へのシステム理論的アプローチを多岐にわたって展開する。
(研究例)
・建築・都市空間のトポロジカルな構造に関する研究
・類似と差異のネットワーク、ミクロとマクロの相互作用の研究
・街・人・生活・モビリティの関係性を考慮した将来の街・モビリティの検討
[日産自動車との共同研究]
・アジア歴史都市における居住環境と都市景観の保全・再生ための都市ガバナンスの研究
[京都大学グローバルCOEプログラムの研究プロジェクト]



図-9 空間の自己組織化とそのシミュレーション
(左は初期配置、右は試行後の配置)

都市空間のトポロジカルな構造の研究例である。都市空間におけるミクロレベルの人間行動に注目し、彼らの移動行動が近傍の状況によって変化する規則を与え、マクロレベルの都市空間にどのような構造が現れるかをシミュレートするシステムを開発し、それを用いてミクロな個人の行動とマクロな都市の空間構造とのダイナミックな関係を探求している。マクロなゾーニングの創発過程を実験的に確かめることができる。


図-10 コミュニティ・ガバナンスに基づく街並みの景観形成の実践

個々の敷地の個別の建築行為を超えて、公共・民間・コミュニティセクター、及びボランティア組織の協働による集合的活動として景観まちづくりを実践する試みである。